Peter’s Viewpoint #44

市場連動型電力料金プラン vs イラン戦争

イラン戦争における思いがけない「犠牲者」は、市場連動型料金プランを契約している顧客だ。4月になると、こうした顧客は毎月の請求額を見て衝撃を受けることになるだろう。これは、戦争によって引き起こされたスポット市場価格の急騰が直接の原因である。

電力のスポット市場価格が前回大きく高騰したのは、LNG(液化天然ガス)価格が高騰したウクライナ戦争時だった。当時、小売電気事業者(PPS)の約25%が、顧客に異常な高コストを転嫁できなかったことなどを理由に、事業継続が困難となった。

この経験を受け、日本では市場連動型料金プランが導入された。この仕組みでは価格変動リスクを顧客が負うため、小売事業者は価格高騰の影響から守られる。スポット市場が安定している局面では、このプランに特段の問題はない。しかし、過去30年以上を見れば、数年おきに発生する大幅な価格高騰は例外ではなく、むしろ通常の現象といえる。

日本とある程度類似した自由化市場である米テキサス州のERCOT(テキサス州電気信頼性評議会)でも、小売事業者はリスクを回避する目的で、多くの顧客に市場連動型プランを提供してきた。しかし数年前の大規模な価格高騰により、顧客の電気料金は通常の2倍以上、場合によっては10倍に達した。その結果、顧客に甚大な経済的損害が生じたため、政治判断によりこの種の料金プランは違法とされた。

ERCOTにおいては、多くの小売事業者は価格高騰リスクから守られていると考えていたにもかかわらず、結果として倒産に至った。顧客の支払い遅延が相次いだためだ。高値で電力を調達した一方で、支払期限までに十分な資金を回収できず、資金繰りが悪化したのである。

今回の経験に加え、今後市場取引量が一層拡大すれば、小売事業者は市場連動型プランから撤退し、価格ヘッジを行ったうえで固定料金プランの提供へ移行していく可能性がある。世界の多くの地域では、顧客・小売事業者ともに1年または2年の固定料金プランが主流となっている。

本シリーズは、業界30年以上の経験を有するスキッピングストーン会長兼CEOのピーター・ウェイガンドによるエネルギー時事コラムです。

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