Peter’s Viewpoint #46
自由化市場における電力会社のリスクマネジメント
かつて日本の電力市場が独占体制にあった頃、各電力会社が利益率や収益を守るためのリスクマネジメントは、経済産業省(2001年までは通商産業省)による電気料金の改定審査(レートケース)に大きく依存していた。この結果が採算をほぼ決定づけていたのである。
電力自由化の進展に伴い、レートケースのあり方を再考する必要が生じている。もちろん、料金改定プロセスの重要性が失われたわけではないが、今日においては、コモディティ価格の動向がリスクマネジメントの成否を分ける極めて重要な要因となっているのである。
自由化の初期段階において、各電力会社はコモディティ価格のボラティリティ(価格変動)に対して、さほど注視してはいなかった。これは、大多数の顧客が新電力へと切り替えず、既存の電力会社に留まったことで、安定した収益基盤が維持されていたためである。
当時から現在に至るまで、各社は余剰電力をいくらで売れるか不透明なスポット市場で売却することを義務付けられているが、それが大きな懸念材料となることはなかった。スポット市場の特性上、価格リスクの管理能力には限界がある。したがって、当時の電力会社が市場の裏をかこうと、過度なリスクテイクを避けていたのは極めて合理的な判断であったといえる。
約5年前、先物市場が導入された際にも、電力会社はすぐには参入しなかった。実際、筆者が参加を働きかけて各社を回っていた頃、その反応はまるで壁に向かって話しているかのようであった。このような慎重姿勢は、日本に限らず、他国の自由化初期にも共通して見られた現象である。
諸外国と同様、現在の日本の電力各社は、コモディティのリスクマネジメントを経営上の重要課題として捉え始めている。依然として初期段階ではあるものの、多くがトレーディングおよびリスクマネジメント機能を組織化し、その取扱量は着実に増加している。
また、リスクマネジメントやヘッジングのスキル向上のために、人材育成への投資も進められている。経営層との対話も、もはや壁に話すような状況ではなく、海外の電力会社がいかにしてトレーディングとリスクマネジメントを駆使し、持続的な成長を実現しているか、その知見を積極的に取り入れようとする姿勢が鮮明になっている。
今後3年以内に、すべての電力会社がより本格的にトレーディングおよびリスクマネジメント機能を導入すると予想する。いかに変化に適応し、高収益化を実現するスキームを構築できるか。その成否こそが、国内電力業界における新たな勢力図を決定付ける鍵となるであろう。
本シリーズは、業界30年以上の経験を有するスキッピングストーン会長兼CEOのピーター・ウェイガンドによるエネルギー時事コラムです。
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