Peter’s Viewpoint #33
アラスカLNG狂騒曲
3/17付け電気新聞記事「アラスカLNG、トランプ外交にどう対応?」に一言👇
政治的なことはさておき、アラスカからの大量のLNG輸送が経済的に実現可能だというトランプの考えは狂気じみている。まず第一に、契約と条件についてアラスカ州、米連邦政府、カナダ、日本、韓国を含む全ての関係者からの合意を得るのに少なくとも2年はかかるだろう。実現したなら、それはちょっとした奇跡といえる。
私がカナダを含めたのは、この長大なパイプラインの一部がカナダの領土を通る必要があるからだ。「カナダ人を怒らせた」というのは控えめな表現だろう。現状では、カナダがこれを承認するとはまったく想像できない。
仮に奇跡が起こり、2027年末までにすべての当事者が条件に合意したと仮定すると、次の段階は法廷闘争となり、環境保護団体、地方自治体などの代理として弁護士たちが法廷で争い大儲けするだろう。アラスカは米国にあり、米国は世界で最も人口当たりの弁護士数が多く、訴訟はショウジョウバエと同じくらいありふれている。 訴訟が一段落するまでにかかる期間は、8年から12年だろうと推測する。楽観的に見て8年、現実的には12年かかるだろう。
結局、ショベルが1本も地面に刺さらないうちに、今日から10年から15年が経過する。その間、日本は脱炭素イニシアティブを推進し続け、LNGの輸入量は減少するはずだ。
私には、どうもトランプがアラスカLNGというお粗末なプロジェクトを売り込もうとしているように思えてならない。日本が交渉のカードとして使う以外に、これを必要とする理由は見当たらない。旅費と時間を費やす以外に、この愚策に実際の資本が投じられることのないよう祈るばかりだ。
本シリーズは、業界30年以上の経験を有するスキッピングストーン会長兼CEOのピーター・ウェイガンドによるエネルギー時事コラムです。
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