Peter’s Viewpoint #16
燃料費調整モデルからの脱却
11/5付け電気新聞記事「大手電力中間決算、通期利益は5社で上振れ/『実力値』に差」に一言👇
大手電力は燃料費調整モデルの代替案を検討すべきではないかと思われる。上記の記事によると、燃料費調整が再び財務結果に大混乱をもたらしている。燃料費が燃料費調整の上限を超え、大手電力が多額の損失を被ったのはつい最近のことだ。
この問題に対処するために米国市場で何年も前から行われているプロセスは、座礁コスト回収と呼ばれている。独占市場設計の下で長期契約を結んでいた公益事業者は、それらの契約コストを料金ベースで回収することが保証されていた。自由化により、料金ベースが独占から競争へとルール変更されたことで、公益事業者は市場外取引から抜け出せなくなった。公益事業者は規制当局の承認を得て契約締結していたため、この状況は彼らにとってフェアではなかった。
米国の規制当局と公益事業者がとった措置は、現在の市場価値と契約コストの差をベンチマークすることで、それらの契約の座礁コストを算出するというものだった。損失は座礁コストとして処理され、公益事業者はコストが回収されるまで、通常10年間にわたって顧客の請求書に少額の割増金を上乗せしてそのコストを回収した。各公益事業会社は、それぞれ個別の座礁コストと割増金を設定していた。
これにより各電力会社は、すでに締結済みの長期契約を維持しつつ、スポット市場で燃料契約のヘッジ取引を開始するようになった。このように、公益事業会社の財務実績は、部分的には、燃料コストと販売価格(マージン)を如何にうまく管理するかに基づいていた。また、これは同じ市場で競争する公益事業会社と非公益事業会社間の競争条件を平等にもした。少なくとも、コストとマージンを管理するためのインセンティブとヘッジ手段を有するという点で、両者は公平になった。
本シリーズは、電力・ガス業界30年以上の経験を有するスキッピングストーン会長兼CEOのピーター・ウェイガンドによるエネルギー時事コラムです。
リスク管理体制の整備やETRMシステムの導入を図るお客様に、自由化先進国基準のベストプラクティスをご提案いたします。「リスク管理・ETRM導入支援」サービスページはこちら。