市場連動型プランの「火薬庫効果」と代替手段Peter’s Viewpoint #7

市場連動型プランの「火薬庫効果」と代替手段

ウクライナ戦争によるLNG価格高騰の煽りでJEPXスポット市場価格が高騰した2022年。このエネルギー危機以降、市場連動型プランを提供する新電力が増加した。これらのプランは、30分ごとに変動するJEPXスポット市場価格を顧客向け料金に転嫁したものである。

エネルギー危機の間、新電力も電力会社も同様に損失を出し、多くの新電力が廃業した。残った新電力や電力会社の多くは、利益を安定させ価格リスクを顧客に転嫁する市場連動型料金プランの提供へとシフトした。

最近はスポット価格が低いため、市場連動型料金プランを提供する新電力は好調である。新電力の中には、料金算定方式に市場価格の変動分を転嫁する項目を組み入れるところも増えている。

しかし、私の考えでは、市場連動型料金プランは「いつか爆発するであろう火薬庫」である。市場連動型料金プランにおいて顧客は価格高騰に対するヘッジ手段を持たないため、スポット価格がまた高騰した時、顧客は通常をはるかに上回る請求書を抱えることになる。現に、大規模な価格高騰は世界中の電力市場で起きている。

この「火薬庫効果」の代表例がテキサス州市場の事例だ。価格が大幅に高騰し、通常の数倍の請求書を受け取った顧客のうち何千人もの人々が、「なぜそうなったのか理解できない、支払えない」と訴えた。これはトップニュースとなり、やがて大きな政治問題となった。最終的な結果としてこの商品を販売した供給事業者は、顧客の不払いによる不良債権で多額の損失を被った。 今日、市場連動型価格プランはテキサス州では違法である。

世界のほとんどの小売電気事業者は、先物や相対取引によるヘッジを利用して、顧客にさまざまな価格プランを提供している。 大半の小売事業者は1年以上の固定価格プランを提供しており、価格の確実性があるため、多くの顧客が選択している。市場ベースから固定価格やその他のヘッジ価格プランへのシフトが、日本で今まさに起こりつつある。

本シリーズは、電力・ガス業界30年以上の経験を有するスキッピングストーン会長兼CEOのピーター・ウェイガンドによるエネルギー時事コラムです。

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