データセンター戦略に見るエネルギーシフトPeter’s Viewpoint #17

データセンター戦略に見るエネルギーシフト

当初数年前から、気候変動への対応、また、企業電力ユーザーの再エネシフトをさまざまな形で後押しする立派な取り組みとして、データセンターが再生可能エネルギーによる電力供給を推進し始めた。その結果、大手データセンター数社が風力発電所や太陽光発電所全体への出資を行うこととなった。

米データセンター連合は、その後、完全にグリーンな戦略への転換を主導し、24 x 7 CFE(24時間365日のカーボンフリーエネルギー)が誕生した。この転換により、供給源は再生可能エネルギー以外に、水力や原子力も含まれるようになった。これは、再生可能エネルギーからカーボンフリーエネルギーへのメッセージ転換という賢明な動きであった。

私は米国で、データセンターとの24 x 7 CFE契約2件に直接関与したことがある。契約をまとめる中で直面した課題とその解決にかけた労力は並大抵のものではなく、各契約の交渉には1年以上を要した。この状況を見たデータセンター関係者の中には、素晴らしい取り組みではあるがあまりにも困難だ、と結論づけた人もいたのではないだろうか。加えて、データセンターの開発ペースに、24 x 7 CFEが追い付くことは不可能に近い。

最新の戦略は、原子力発電に頼るというものだ。データセンターは負荷が大きく、非常に安定した信頼性の高い電力供給が必要なため、この戦略は理にかなっている。風力、太陽光、水力発電を組み合わせる必要があるこれまでの契約とは異なり、原子力発電では単一の供給源から24 x 7 CFEを実現できる。

一部のデータセンターが追求している原子力戦略は、次の3つだ。1. 小型モジュール炉導入、2. 既存の原子力発電所からの電力購入、3. 再稼働する原子力発電所からの電力購入。

これまでのところ、2つ目の戦略(既存の原発)だけが抵抗に遭っている。懸念されているのはシステム全体の信頼性と、すでに原子力発電所の電力を使用している顧客への経済的損害である。 反対意見は理解できるが、それは間違ったメッセージだと思う。いずれにしても、データセンターの需要増に対応するためには、より多くの発電所が必要になる。データセンターの需要が10%増加するという数字が正しいと仮定すると、発電量が不足することは明らかだ。

私としては、データセンターが引き続きCFEにコミットし、原子力発電への投資に意欲的であるという事実は歓迎されるべきだと思う。歴史的に見ても、顧客は原子力発電などのアップグレード費用を賄うための料金値上げに不満を訴えてきた。しかし、データセンターから不満を聞くことはない。AIやクラウド上のあらゆるものを維持したい消費者や企業の需要に応えるために成長を続けること、そのために十分な電力を確保することが彼らの最大の懸念だからだ。

本シリーズは、業界30年以上の経験を有するスキッピングストーン会長兼CEOのピーター・ウェイガンドによるエネルギー時事コラムです。

スキッピングストーンでは、海外の自由化先行市場で培った知見を基に、電力リスク管理、2024年以降のエネルギー市場動向、システム選定のノウハウ等のホワイトペーパーを作成し、無料で配布しています。ホワイトペーパーページはこちら

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