電力小売新時代の岐路に立つPeter’s Viewpoint #34

電力小売新時代の岐路に立つ

これは、海外の自由化市場の教訓を活かした興味深い展開である。米国市場が自由化され電力会社がデリバティブ市場を用いてヘッジをせざるを得なくなった当初、3通りの戦略が浮上した。

そのうちの1つは、JERAとよく似た戦略であり、ノウハウやシステム、経験を有するトレーディング会社と合弁会社を設立するというものである。米国の好例として、ボルチモア・ガス&エレクトリック(大手電力会社)とゴールドマン・サックス(金融トレーディング会社)の合弁事業として設立されたコンステレーション・エナジーがある。

もう1つの戦略は、システムを導入し、トレーダーを雇用し、スタッフを訓練してトレーディング事業を立ち上げるというものだった。これに成功した米国の大手電力会社には、Sempra(旧サンディエゴ・ガス&エレクトリック)、DTE Energy(旧デトロイト・エジソン)等がある。この戦略を採用した企業は多数あり、成功と失敗の差は、戦略に対する真剣さの度合いによって決まった。多くの電力会社がトレーディング機能の追求に乗り出したが、本腰を入れて取り組まず、最低限の機能しか実装しなかった。数年後、最小限の戦略で生き残り成長した電力会社は皆無であった。

最後に紹介する戦略は、「様子見」の名のもとに「何もしない」というものだ。これは、投資を必要としないため、取締役会にとっては楽な道である。通常、「何もしない」戦略は、取締役会メンバーの知識不足と失敗への恐れから生まれる。米国では、こうした事業者は、上記の戦略のいずれかを採用した事業者よりもはるかに業績が低迷した。

本シリーズは、業界30年以上の経験を有するスキッピングストーン会長兼CEOのピーター・ウェイガンドによるエネルギー時事コラムです。

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